白と黒のアリス

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暫くぼんやりとたゆたう雲を眺めていたけど、それじゃただ無駄に時間が過ぎるだけだと気づく。
そういえばチェシャ猫さんの声がない。後ろを振り返った。
正面とほぼ同じ風景。

あれれ?

納得いかずぐるりと一回転。
ワタシは間違いなく森に囲まれた草原にいた。

抜けてきたはずの暗闇はどこ?
チェシャ猫さんはいったい?

ここはどこなの?

疑問符を並べたところで答えは出ない。
その時、チェシャ猫さんの声が聞こえた気がした。

―― 白兎を追え。 ――

そうだ! あのウサギはどこへ行ったんだろ?
もう一度、探すように視界を360度回転させる。

いない……。

追わなきゃいけない目標を見失ってしまったみたいだ。どうしよう? 白兎を追って白のアリスを見つけなくちゃいけないのに。
眉を寄せて額に人差し指を当てながら首を捻る。良い案なにか浮かばないかしら?
すると視界の端に木々に隠れて動く白い影が飛び込んできた。

「あっ!」

急いで方向を変え、ワタシは全速力で白いものに駆け寄った。徐々にしっかりとその影の姿が形を成していく。
黒い長い髪が真上で一つに括られていた。白い洋風の人形が着るみたいなレースがちりばめられたワンピースを羽織り、肌は微かに紅葉してる。
ウサギではなく人間だった。
しかもその後ろ姿には見覚えがある。懐かしい感情が近づく度に込み上げてきた。

「お姉ちゃんっ!」

彼女が振り返るその瞬間、ワタシは相手に抱きついていた。彼女の凛々しい眉は寄せられて、鋭い黒い瞳は困惑に揺れている。口は小さく開けられて、言葉は発せられない。そんな相手の表情にも懐かしさが胸をいっぱいにした。
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